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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
狂疾貴族層
……いかん、いかん。穢に触れた人間を、館の屋の内の、どこに上げてもよくないぞ。それこそ、大事だ。神禰宜をよんで、穢れ払いをすますまで、土居外の、牛小屋へでも入れておけい。……そういうたのじゃ。……それをばなんぞ、爺、おろそかにも、彼方では、招き上げようとしているではないか」
「や、や。それは、しもうた」
「もう遅いわ。穢れ者を上げた所は、すぐ浄めろ。そして、童の体も、さそくに浄め払いして、水垢離をとらせい」
果ては、肩に顫えを示すほど、忠平は、癇をたてた。
この異様な怒りかたは、病的にすら見えたが、臣賀でも他の召使でも、これを、不自然な嚇怒とは、誰も見ない様子なのだ。
狂疾貴族層
なぜであろうか――というに。ひとりここの藤氏の長者ばかりでなく、禁中でも、朝臣一般のあいだでも、“触穢”といえば、おぞ毛をふるって、穢れ払いに、幾日でも、門を閉じ、衣冠を廃して、参内も休め、客を謝すという例を、誰もが知っているからである。
強烈な信仰は、半面に、極端なまでの迷信をいつか伴っていた。禁厭、祭祝、祓除、陰陽道、物忌、鬼霊、占筮など、多様な迷妄の慰安をもたなくては、生きていられない上流層の人々だった。