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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

忘恩論争

「や。いたわ。ここにおる。玉虫どのの局に来て、話しこんでいるわ」

と、あきれたように、ほかの者を、呼びたてた。

将門は、弾かれたように、縁を離れて、自分から家人たちの方へ、歩みだした。良兼の家人たちは、彼と玉虫のすがたを、等分に見くらべて、瞬間、妙な顔をしていたが、

「豊田の小殿。――良兼様が会うてやると仰せられた。こちらへ、渡られい」

と、先に立った。そしてもとの広前に戻り、そこから館の内へ、案内して行った。

忘恩論争

京風の建築をまねたのであろう。寝殿、対ノ屋づくりである。しかし、この地方の風雪に耐えるためには、柱もふとく、壁も多くなければならない。自然、頑固であり、粗野であり、薄暗くもなる。――後の鎌倉建築と似るところが多かった。

内の坪(中庭)へ面した広床の間に、藺を敷き、円座に坐って、酒を酌みあっている客と主人とは、さっきから、愉快そうに談笑していた。

上総介良兼と、水守の六郎良正である。

将門の父良持の弟たちだ。つまり叔父共である。ここにはいないが、常陸の大掾国香が、いちばん上で、その下が将門の父、次が良兼、良正の順だった。

「良正。――将門がこれへ来ても、余り嬲らんがいいぞ。