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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
翁のことばについて、弟子達も、水守の良正や、羽鳥の良兼の悪口を、不遠慮に、いい出した。奴婢を、牛馬のごとく、ムチで追い使うことだの、その家来たちまで、市へ来ても、部落を通っても、肩で風を切って、あるいているとか、また、註文の武具を、納めに行っても、一度でも、文句なしに、取ったことはない。工匠の良心などは、わからないで、価の安い高いばかりいうとか……いい出すと、きりもない程、弟子たちは、しゃべった。
「いやいや、あの二人は、まだ良い方なのだよ」
と伏見掾はいった。媼や、弟子が、意外な顔つきをすると、翁は、「そうだとも……」と、自問自答して、仕事の手をつづけ、やがてまた、いい足した。
「――ほんとに、お肚の悪いのは、石田に住む常陸大掾国香さまじゃ。豊田の良持様の大きな御遺産を、あんぐり、呑んでおしまいになって、ほんの僅かを、良兼、良正様へ、くれておやりになっているに過ぎぬ。……だが、御自身は、そ知らぬ顔して、何もかも、良兼、良正のお二人にやらせているという狡さ。よくいう古狸というのは、ああいうお方の事であろうよ」
遠くで、さかんに、犬が吠える。野盗のそなえに、この部落でも、犬を飼っていた。