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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

叔父の事を、口にすると、将門の眼は、眼の底から、無意識に燃えだした。筑波の山影を、はるかに、振りむいて、しばらく、ものもいわなかった。

ふとまた、われに返って――

「またも途中で、万一があってはと、梨丸がいるのに、お前たちまで、迎えによこしたのは、将頼のさしずだろう。そんな取り越し苦労はするな。お前たちまで、将頼みたいに神経が細くなってはいけないぞ」

「いえ。ちがいます」

「何が、ちがう」

「私たちに、兄上を、早く連れて来いと仰っしゃったのは、都から来ているお客人です」

「都の客人?」

「え。ずっと、泊って、兄者人のお帰りを、豊田の館で、待っておいでです」

「ばか。それなら、そうと、なぜ早くいわないのだ」

「将門を、びッくりさせてやるのだから、会うまでは、黙っておれと、固く、お客人から、口止めされたものですから」

「そういうのを、馬鹿正直と、都ではいうのだ。冗戯をまにうけるやつがあるものか。して、そのお人の名は、何と、聞いたか」

「お名は、伺っておりません」

「将頼からも、聞いていないのか」

「ええ、将頼兄も、知らないようです。けれど、偉い人らしいといっていました」

「年ごろは、幾つぐらい」