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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

世は、承平の大飢饉といわれた程なのに、豊田郷は、この期間に、かえって、富を増した。

朝廷から任ぜられていた相馬御厨からの御料の納物は、春秋とも、きちんと都へ送っていたし、租税も完納できた。

また、さっそく、種つけし始めた牧の牝馬は、みな仔を生み、明けて三歳の春駒や、二歳、当歳仔が、大結ノ牧に、群れ遊び、むかしに近い景観を呈し始めてもいる。

いや、もっと、大きな力を加えたことは、隣郡の結城や猿島の小豪族が、帝系桓武の末流という魅力にひかれ、また実際に、彼の努力やら、豊田郷の勃興を見て、将門の館へ、何かと、誼みを通じてきたことである。

それにたいしても、彼は、

「うむ、一つになるか。よかろう。小さく、こせこせ、茂り合うよりは、一門となって、力をむすび、深く根を張って、大木となろう」

来る者は、拒まず、誰とでも、杯をくみ交わした。彼にはどこか、そんな風に慕われる親分肌な人がらがあったとみえる。由来、関東八州は、後世まで、ややもすると、杯によって義を約す侠徒の風習を生じたのも、遠く、平安の世の坂東曠野時代、この辺の原始制度の中で強く生きるために自然に仕組まれた族党結束の名残といえないこともない。