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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

妻ならぬ妻は、郷内にもおいていた。館の棟のちがう所に住んでいたかもわからない。しかし、正妻はまだ娶っていなかった。

「兄者人。私は知っています。……当ててみましょうか」

いったのは、弟の将頼である。

将頼は、うしろにいた梨丸と、顔を見合せて笑った。

「なに。知っていると?」

「分っていますとも」

「当ててみろ」

「当てたら、何を下さる?」

「おまえには、御厨の御料地をふくむ、守谷一郷をやる」

「え。……まさか、兄者人、そんな、おねだりはしません」

「よいから、いえ。当ててみろ」

「野霜の……桔梗どのでしょう」

「そうだ」

将門は、手を打った。そうだといった声も、途方もない大声だったので、みな、あっ気にとられて、将門を、見まもった。

しかも将門は、あわてて杯を唇へ運び、眼に涙をためていた。そして、将頼に、杯を与えた。

「当たったよ、将頼。分っていてくれたのだな、うれしいぞ。……どうだ、将平も、将文も、将武も、将為も」

ずっと、弟たち、すべての顔を見わたして、

「桔梗どのを、おれが、娶ってもいいか、どうか。それが聞きたい。家人共も、いってくれ、遠慮なくいってくれ。この館の北の方としてよいか、悪いかを」