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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

と、おそろしく真剣になって訊ねた。

将頼を始め、彼の弟たちは、口々にそれへ答えた。

「よいも悪いもございません。兄者人が、お好きな方なら」

「兄者人も、御決意なのでございましょうが」

「うすうすは、将頼兄から、聞いていました。そんな、お好きな方があるのに、いつお娶いになるおつもりかと、私たちこそ、待ち遠い思いをしていた程です」

「…………」

将門は、大きな味方を得たように、弟たちの一語一語を、うなずきで受けては、だらしなく、鼻のあたまの涙を、水洟と一しょに、こすっていた。

「そうか、お前たちが、そういってくれれば」

「なぜ、そのように、私たちへ、お気がねなさるのですか」

「いや。あれを娶うには、お前たちの力もかりなければならないからだ。手ッ取りばやく、結末をいうならば、桔梗どのの親、野霜の翁のことばには、晴れて、嫁入らすというわけにはまいらぬ程に、強っての仰せならば、娘を、盗んで給われ――と申すのだ」

「あ、そうですか。余りに身分が違いすぎると、あの実直な親共は、卑下しているわけですな」

「……とも、ちがう。理由は、まったく、べつにある」

「ではなんで、そんな古風な事を、望むのでしょう。