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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

「では、二月までには、嫁御寮を、ここに迎えよう。何かと、その心得をしておけやい」

と、宣言した。

酒の強いのは、この時代の、殊に、この原野の人種の特色である。十壺の黒酒(黍酒)を空にしてなお足りぬほどだった。一門、泥亀のように酔った。そして、将門の恋と、併せて、正月の夜を、底ぬけに、祝った。

ところが、ただひとり、不安そうに、これを眺めていた老人がある。将門の父良持の代からいる多治経明という老臣である。

経明は、もう眼もかすみ、腰も曲がって、物の役には立たない老齢なので、御厨の御料の池の番所に詰め、めったに、館へも来なかったが、たまたま、新年の宴に会して、かえってひどく憂い顔に沈んでいた。

何か、彼も一言、いいたげであったが、この若者ぞろいの、逞しい野性に酒気をそそいだ雰囲気に反むくような事は、とても老人の乏しい意力では、よく為しうることではない。

――と、悟ったように、彼のみは、独り、とぼとぼと、暗い遠い道を、御厨の御料園へ帰って行った。

常陸源氏

正月中は、賀客が、絶えない。

将門は、坐ったきり、客に接して、のべつ酔っているような恰好だった。

きょうも、菅原景行が来ていた。