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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

その事は、数日前から聞いていたし、相手が、将門と聞いて、われらも共に、恥辱を感じていたところだ――と、焚きつけた。将門ずれに、見返されては、あなたの男も立つまいが、われらとて、捨ておかれない。無念である。じつに忌々しい限りだ、と、若年でもない二人の年配者にしてさえ、怒りやまずいうのだった。

その間、国香も、むずかしい顔して、疎髯を指でまさぐりながら、チロ、チロと兄弟たちの顔を見たり、良正の煽動的な語気へ、大きく頷いてみせたりしていた。

それでなくても、鬱憤にくるまれていた、扶、隆の血気は、わけもなく誘い出された。そして、激越な語気のもとに日頃の大胆な考えを口にし出した。

「もとより、このまま、私たちも引っこんではいない。どうしたら将門を、必殺の地へ、おびき出せるか――と、じつはその謀をこの間じゅうから考えているのです。何か、よい策があったら、お智恵をかして下さい」

酔いを蒼白なものに沈めて訴えるのである。その若気を、ひとまずは宥めながら、実は、不抜な意志にかためさせているような言葉が、国香や良兼たちの老巧な態度に見られる。

貞盛も、さきに自分の手でやり得なかった事が、扶や隆の手で行われれば、これに越したことはないと思った。