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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

招かざる味方

招かざる味方

さすがに皆、戦いつかれて、血と土にまみれた姿を、かえりみ合った。たれの具足にも、矢が立っている。

「もう追うな。これくらい痛めてやれば、懲りたろう。この広い曠野、どこまで、追い捲くしても、果てはない」

将門は、馬を降りた。水が飲みたかったのである。家々の間を、水の樋が通っている。そこの筧の落ち口へ、顔をよせていた。

将文も、兄をまね、郎党たちも、池のまわりへ、屈み合った。

すると、将頼が、注意した。

「やあ、兄者人。かりにも、馬を降りてはいけませんぞ。あぶないあぶない」

「なぜか。将頼」

「ごらんなさい。どこの農家も、空き家です。空き部落だ。察するところ、今まで、敵がいたにちがいない。四方から火を放たれる怖れがありましょう」

「や、そうか」将門は、急いで、馬を寄せた。日頃は、意気地のない、気弱な将頼と思っていたが、その将頼が、きょうは自分よりも、落着いているし、よく何かに気がつくのには、驚かされた。

「早く、野へ出ましょう。味方も追々、寄って来ましょうが、部落の中にかたまるのは、物騒です。遠見もきかないし」

「オオ、いう通りだ」

急に、人数をまとめて、走りかけたが、将頼が不安がっていたように、もうその行動は、遅すぎていた。