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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

以前の帰国とちがって、こんどは、はっきり、豊田の家には、自分を待っていてくれる妻がある。壮気、孤独の頃、ふと藤原純友と会って、血のけの多いことを語りあった頃と今とは、まったく、心のありかたが、違っていた。

まして、訴訟にも勝った。その訴訟が、後には、自分の正義によって剋ちとったものでなかったのを知ったのは、淋しいことだし、何だか、心の負担にたえないが、しかし、勝ったことは、事実である。間違いはない。

新緑の豊田の館では、もう先に、彼の便りで知っていたので、彼がここに着く日には、一族郎従が出揃って、門に、凱旋の主を待っていた。

桔梗は、産屋を離れたばかりであった。でもその日は、化粧を新たにして、母となった腕に、珠のような男の子を抱いて、旅の夫を、中門のほとりで待ち迎えた。

繭の中に

この晩春ほど、妻の桔梗が、良人の眼に美しく見えていることはない。

すこやかな初産を見て後、一しお血色を浄化され、ちょうどその年齢や肉体も女の開花を完全に示してきた風情である。爪のさきから眸の奥にまで産後美の熟れを透きとおるほど象徴している新妻だった。

「わたくしは倖せです。