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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
「逃げ口を取って、逸するな」
などと口々にどよめき渡って、一瞬、彼ひとりに、矢をあつめた。
矢風の外へ出るのが重要である。将門は一心不乱の鬼神になった。そして、直接、敵兵に触れ、悍馬の脚もとに蹴ちらしながら、長柄の刃が血で鈍るほど、縦横無尽に、薙いで行った。そして、ついに、主将の陣へ、迫りかけた。
そこが、あきらかに、良兼のいる陣の中核と分ったわけは、いちめんな青芒に蔽われている低地へ、さらに、楯を囲い、一部に、幕を繞らしなどして、ぐるりと、守り堅めている武者も、雑兵とはちがい、見るからに皆、いかめしい甲冑や武器を揃えていたからである。
「良兼は、どこにいるぞ。良正はいないのか。小次郎将門が、今日はここまで来たのに、なぜ、おれの首を取りに出ないか」
「おうっ、将門、来たか」
それは、誰の声とも、咄嗟には、分らなかったが、ばらばらと、一方の楯囲いを開くと、芒の波の上に、ゆら、ゆらと、異様なる二体の木像が、神輿のように、舁ぎ上げられ、左右に数十人の甲冑武者が従いて、
「……おうっ、将門、来たか」
と、唱歌のように、声をそろえて、どなった。
「や、や? ……何だろ」