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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

そして、そのどっちかに拠って生きている二つの群は、白と黒のように、極めて明瞭な生態別をもっていた。上流貴族階級と、貧民浮浪者層との、ふた色でしかなかった。

中流階級という層は、その頃まだ、日本には見あたらなかった。それらしき知性人や、無産文化人の極く少数が、いることはいても、それとてみな、ボロ衣冠をまとい、藤氏の権力下にある朝堂の八省に、名ばかりの出仕をするか、摂関、大臣家などに禄仕して、ほそぼそ生活を求めるしか、社会は、彼等を生かす機能も余地も持たなかった。社会構成に層を成すほどな中流人士とてはなかったのである。

――だから、相馬の小次郎が、入京の第一日に接触した者はみな、その一方の黒い層に住む人間たちだったことは、もう再言するまでもなかろう。ただ、それにしても、暗夜の寺域に、鬼火のごとき火光をかこんで、更くるも意とせず、勝手気ままな囈言を投げあっているこれらの男共は、いったい何を生命に求め、何を職としているかという疑問になると、これは、小次郎がなお多くの年月を、実際に、この都会において生活してみた上でなければ、そう簡単に、解るというまでの、理解に達するまでにはゆかない。