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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
で、武芝の居館は、時代的に観ると、やはりその頃にあっては、領下の荘園を管理するに都合のいい枢要地にあったものにちがいない。
そして、彼は折々、ここから、多摩の府中にある国府ノ庁へ、通っていた。
「近頃、都から、右馬允貞盛が来て、経基の館に、逗留しているようです。――いちど、お訪ねなされてはどうでしょう」
武芝の家人は、市で聞いて来た噂というのを、主人につたえて、そう勧めた。
「ばかをいえ、おれから出向くことがあるものか」
武芝は、武蔵の国主をもって、自ら任じていたので、
「――右馬允風情が、来たからとて、なにもおれから膝を曲げて、御機嫌伺いに出向くことはない。用があるなら、彼の方からやって来るさ」
と、ほとんど、眼もくれていなかった。
ところが、やはり気には懸るので、内々、入れてある密偵をよび寄せて、探らせてみると、貞盛の滞在中、興世王も加わって、たびたび、密議がひらかれ、また、ひそかに、兵備も進められているらしいという。
「……はてな?」
と、武芝が、警戒し出した時は、もう遅かったのである。ある日の早暁、約二千ほどの兵が、ここを急襲して来た。
武芝には、応戦の備えがなかった。