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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

蝦夷萩と呼べば

――今さら、御教書などを下して、調査をお命じになるなどの事は、かえって、将門をして、増長させるだけのものでしょう」

と、反対した。

けれど、忠平の心の奥には、まだ小次郎時代の将門が残っていた。――あの小次郎がと疑われるのである。

「いや、念のためよ。何事にも、念を入れ過ぎて悪いということはない」

忠平は顔を振って、初めの考えを変えようとはしなかった。彼も今では、小次郎が仕えていた頃の色好みな風流大臣ではない。年も七十に近く、氏の長者として、また朝廷の元老として、何事にまれ、この危うい世を、どうしたら穏やかに治め得るだろうかと、さすがは、憂慮にたえない立場にあった。

蝦夷萩と呼べば

糺問使の多治真人は、約二ヵ月ほどに亘って、武蔵、下総、その他の地方を視察し、そして将門にたいしては、直接、面談して、その釈明を、求めた。

将門にとっては、すべてが歪曲された無実である。

貞盛の讒訴であり、経基の虚構にすぎない。

彼は、それをさらに確証づけるために、武蔵、上野、下野、常陸、下総など、五ヵ国の国衙から、解文(官庁の証明)を取り寄せて、

「かくのごとく、中央は知らず、坂東地方では、自分を非なりと認めている者はありません。