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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

不死人は「時来れり」と考えたので、こう将門へ、献策した。

「え。……乗込む? おぬしが常陸へ行くというのか」

「いや、そんなケチな小策ではありません。堂々と、兵馬を立て、陣容を作って、相馬殿が国司維茂に見参せん――と公言を払って行くのです」

「口実がないではないか、口実が」

「表面の理由は、いくらでもあります。――藤原玄明なる者が、豊田へ哀訴して来たによって、これを助けてやって欲しい、玄明の追捕を止め、彼を、旧職に復してもらいたいと申せば、世上への聞えもよいでしょう」

「やろうか。不死人」

「やるべしです。そして、われわれが常陸に入れば、彼らの狼狽ぶりがどうか、すぐ分る。また、貞盛も慌て出して、尻っ尾を出すにちがいない。――場合によっては、その途端に、貞盛めを、生け捕るなり、首にして凱旋するような事にもならない限りもありません」

この策には、興世王も、口を極めて、賛同した。将頼、将平、将文なども、

「さあ、そう巧く行くだろうか?」

と、多少の二の足をふんだが、まったく不賛成でもない。

そして、その年、十一月二十一日のこと。

将門はついに肚をきめた。部下の将兵一千名を従え、豊田から常陸へ向って出発となった。