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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
しかし、将門問題については、この父子の意見が、一致していなかった。
「わしは、将門という人間を知っておる。愚直だが、佞奸ではない。よく、人に訴えられてばかりいるが、何かのまちがいであろう。いわんや、大それた謀叛などを企む男とは思えぬ」
これが、忠平の観ている将門であり、従来からの、彼の情勢判断の基調となっていたのである。
ところが、子息の実頼や師輔の考えは、まったく違う。
この二人は、貞盛の報告や、貞盛の訴えに、まったく同調していた。
「父君は、あまい。どこやら、もうろくしていらっしゃる」
「いや、むかし、わが家の青侍に置いたことのある将門なので……」
「うむ。人情、やはり肩を持ってやりたいのであろ」
「それもあるし、とかく、時勢にも、どこか、おうとくなられてもいるし」
そんなふうに、忠平の判断は、将門の肩持ちにすぎないもの、そして、老父が一片の私情であると、頭から決めてかかって、従来、幾たびかの対将門方針を選ぶばあいにも、「まあ、まあ」と、片づけておくだけで、これを朝議のうえでは、採らなかった。
で。――これまでの間、糺問使を派すにも、処断を下すにも、つねに、煮えきらないような中央の東国対策の裏面には、執政父子のあいだの、こういうもつれや、意見のくいちがいも、多々、原因をなしていたものにちがいない。