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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

秀郷出兵

天皇おんみずから、南殿に出御され、忠文に、節刀を賜い、任命式が行われた。侍立の百官は、

「首尾よく、凱旋あれよ」

と、万歳を唱えて、それを歓送した。

副将には、藤原国幹、平清基など、東国の守や介が、任命され、そのほか筑波の羽鳥の良兼、良正の子や甥など――あの平公連、公雅といったような顔も、軍のうちに、見えていた。

秀郷出兵

征討軍が、都を発向したのは、一月二十七日であり、二月上旬には、もう大行軍の列が、東海の駅路を、東へ東へ、蜿々と、急いでいたはずである。

ところが、大将軍忠文を初め、副将国幹にも、全軍の将士にも、将門にたいして、どれ程な自信と意気があったか、甚だ疑わしい。

――というのは、都を立つ前から、かねて貞盛がいいさとしたり、また、坂東の国司たちが、逃げのぼって来ては、吹聴しちらした“将門禍”の誇張が、余りに効きすぎていた結果、将門旋風の波長は、今や、極端な“将門恐怖”をひき起し、将兵たちは、家を立つにも、駅路の軍旅のあいだも、将門将門と、口にするたび、悪魔に憑かれたような怯えを募らせていた。

いや、これはひとり、彼等の臆病風ばかりではない。