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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

などとある記事は、総じて後の粉飾である。後世の武門武家が、系図の上で、その家祖を、秀郷としたり、貞盛とあがめたりした関係から、箔に箔をつけてゆくうち、史上の英傑のように称えられて来たものといってよい。

だから、秀郷、貞盛などは、今日まで、どんな美名をもって来たところで、それは偶像であって、ほんとの人間そのものではなかった。しかし将門は、今でも人間そのままを感ぜしめる。天慶以来、一千年。大逆人の濡れ衣を着せられて来たが、もう彼の偽官だの僭上説を、真にうける人はいない。やはり、さいごは、裸の彼が、残ったともいえる。裸は尊い。いや、裸以下には正味の価値は下がらない。

世に弄ばれた将門とは反対に、世を弄んだ不死人のごときは、どうしたろうか。南海の賊も、討伐されたので、彼の帰る塒はもうなかったろう。都の秩序も、いつまで、彼らの跳梁に都合のよい状態を持続してもいなかったであろうから、そのはてはおよそ知れている。世を弄ぶつもりの彼や純友一味の輩も、結局は、時代の風に、片々の影を描いては消え去る落葉の紛々と、何ら異なるものではなかった。