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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
学問もし、人間もつくり、はやく故郷に帰って、弟共をも安心させたい。同族の輩にも、よろこばせたい。そして、父が遺してくれた莫大な田産と家門とを経営する身にならなければならない。
ただ、わずかに、不平だったのは、
(従兄たちは、ああして学業を終え、みな、低くても、位置を得ているのに、どうして自分のみ、いつまで、こんな牛部屋の隣に住み、学院へも入れられずに、きょうまで放ッておかれたのか?)
という不審だけであった。
しかし、彼は元来、もの事を、善意にうけとる素朴な本質と、人を信ずる純一な性情がつよい。で、こういう疑問がわいても、彼が彼にする答えは、
(きっと、大叔父の国香が、おれに持たしてくれた添え状に、そんな事まで、細かに書くのは忘れていたからにちがいない。――そして、忠平公も、あんな暢気なお方だから、おれが仕えていることも、迂ッかりしておいでになるのかもわからない。……だが、こんどは、従兄の貞盛から、話してくれれば、ああそうかと、お気がつかれる事だろう)
ひたすら、彼は、その吉報を、待ちかねた。――繁盛から、何かいって来てくれる。あるいは、突然、忠平公から、