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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

と、果たして、忠平は、聞き咎めて――「その、小舎人を、御存知か」

「いや、見も知りませぬが……」

「なにか、粗相いたしたか。その召使は、お汝の国もとに近い、下総の良持の子じゃがの」

「良持? ……と、仰っしゃると、下総の豊田の郷にいた平良持がことでございますか」

「そうじゃよ。知らんかの。常陸の国香から添え手紙あって、生来、痴鈍な童、故あって、郷里にもうとまれ、とかく、肉親たちとも、折合いのむずかしい者故、長く、当家の下僕のうちになと、飼いごろしに、召使うてくれいとあったので――そのまま館においておる」

「これは、亡き良持の、何番目の伜にございますか」

「さあて。三男やら、四男やら、そのほどは弁えぬが、良持の子とは、国香の状にもあった。多分、外の妾の子でもあろうか。ともあれ、鈍な子と、国香の添え状にも、ことわりのあった者じゃ。何か、粗相をしたなら、ゆるしてやれい」

小次郎は、地にぬかずいている耳へ、そのまぢかな声が、何か、ただがんがんと、地うなりのように聞える心地で、満足には、聞きとれなかった。

忠平のことばの途中から、くわっと、血が逆上っていたためである。