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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
公達
飽いたら、浪花江の遊女に売りとばすから、探して、買いもどしたらよかろう。……と、かようにいい放って逃げ失せました」
小次郎は、そうしゃべっている者が、自分ではないように、一息にうまくしゃべれた。
公達
たれにもいうなよ。――小次郎はかたく口どめされた。もとより大臣のおん為に悪いような事、何しに口外いたしましょう。小次郎は答えた。ただちに、彼は、信頼を得た。
約束の、翌々日の夕がたである。
彼は、忠平からあずかった砂金の一嚢を携え、八坂の塔の下へ行った。
たれもいない。不死人も来ていない。
清水寺が峰ふところに建立されても、このあたりは夜に入ると、怪鳥の羽ばたきを聞くような淋しさである。老杉の上に、夕月を見た。やぶ蚊が襲ってくる。通る僧侶もない。
「やあ、来ていたのか」
待ちあぐねて、放心していた頃、いきなり木蔭から不死人の声だった。小次郎は、おとといの、結果を告げて、
「お約束の物です」と、すぐ、金を渡した。
不死人は、大笑いして、受け取ると、うしろにいた手下の男へ、
「禿鷹、預かっておけ」と、右から左へ渡して、なお何やらいいのこすと、小次郎を見て、こう誘った。