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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
英人スコットとの旅
私がそのころ役人であったので、この反対運動を手伝わせようとしたのである。和歌山県の方ではあまり効き目がなかったが、熊野川の直ぐ東にあたる、三重県の阿多和神社については成功した。よほどうれしかったと見え、「……楠の木もただ柳の蔭を頼むばかりぞ」というような歌を書いてよこした。いつも手紙には、じつに細かいことが細かい字でぎっしり書いてあったが、困ることには話題がいつも飛躍するのであった。
南方氏の仕事の中で、何とか後の世に伝えたいと思うのは粘菌の研究で、これは世界一ではあるまいか。西洋から帰って来るまではたった二十種ぐらいしかなかったものが、いまのようにふえたのは、まったく南方氏の功績で、あの英文の遺稿を、世界に発表することができたらと願っている。
英人スコットとの旅
新渡戸さんの家で開かれた郷土研究会には、ほとんど毎回のように外国人が来て、いっしょに食事などをした。大正四年の夏ごろ、ロバートソン・スコットという英人夫妻が参加したことがある。細君はアイルランド人、主人はスコットランド人で、もとは本国で『ペルメル』という雑誌の記者をしていたが、南阿戦争の時に反対論を書いたために退社させられ、それからは民間の文筆人となって、たくさんの著書のある人であった。