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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
海のロマンス
さえ思われる。昔は漂流物の拾得は、今よりはるかに大きな生産事業であったに違いない。外国の学問を手本にとるといっても、海岸のない国の人間の考えていることを鵜のみにし、いっしょになって考えることは、海に住む国民として反省しなければならないことである。
海のロマンス
日本の自然史を調べ、日本の国土の歴史を考えるとき、昔からこれを豊富にして来たものは、何よりも風と潮とであったことを、しみじみ感じる。定期風が吹く。それ以外にも強いの、弱いのさまざまの風が海と陸とに吹きつける。潮流がたえず海岸を洗っている。この国土は年百年中風と潮とによって鍛えられて来たわけである。
播磨灘を出て瀬戸内海を旅してみると、波打際まで木の生えている島などがあって、本当に昔がなつかしく偲ばれるのである。崖が崩れていれば崩れた際まで草木が青く茂っていて、もし何かのはずみで海に流れ出ると、そのまま流木となってしまい、しまいにはどこかに漂着する。流木といえば、紀州の沖でも、山形、秋田あたりの沖でも聞く話だが、何年かに一遍ぐるっと回って来る流木があるという。年経てまわりに苔や藻が生え、それに小さな魚などがびっしりとついている。