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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
花袋への好意
それで私はよく田山君の顔をみると「君が悪いんだよ」などと無遠慮にいったものである。
花袋への好意
私があまり田山君の悪口をいうので、暫くの間私の所へ来ない時がつづいた。そのお互が遠ざかっていた時代が、どうも田山の生活でいちばん豊かになったころだったらしい。旅行をしてもお伴をつれて歩いたりしていた。
私はどういうものか、まあ虫が好くというのか、ずっと好意をよせていた。彼が亡くなって間もなく、新宿のどこかの料理屋で、田山以後の新しい文士連中が、田山君のためと称して集まったことがあった。その折、田山君のためといいながら悪口ばかりいっているので、その席上で私は遠慮なくいった。「田山君の君らに対するいちばん大きな功労は、死んでやったことだと思う。田山君が今日生きていたら、君らはまだそんなにやれないんだろう」といったところが、大いに喝采を博したことであった。
田山が去った後に出て来た人たちというのが、『文藝春秋』の菊池君の仲間ではないかと思う。そろそろ前後重なり合った時期で、田山の方で圧迫していたから、そういっては悪いかもしれないが、いちばん対立関係にあって、抑えつけられていたのがあの連中であった。