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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
文学の思い出
洒落の解る子供
瀬戸内の風景を描いたのが大三島神社の宝物館に入っているが、あれは赤穂に近い坂越の景色である。細川家にある室君の屏風は、人物を大きく描いてしまったために風景がよく出ていないが、あれはきっと故郷の播州に対する御奉公のつもりだったのであろう。理解者があって、鏑木清方、結城素明、吉川霊華等の仲間と金鈴社というのを作っていた。
子供のころ、小さい輝夫をつれて辻川の俥の立場にゆき、車体の背に描かれていた曾我兄弟の絵などを説明してやったのが、とうとう実を結んだことを思うと、私としてもひとしお感が深い。
文学の思い出
洒落の解る子供
子供のころ私はよく大人の側にいて、話をきいていた。父のように多少学問の道に入っていた者の友達との話には、ちょっと特徴があった。
父の仲間はどちらかというと、頼山陽なんかに対する反感があったのかも知れない。山陽の話もよく聞いたが、むしろ対立者であった中島棕隠(文吉)のことを、よくいっていた。棕隠の逸話として、幼いころの私が小耳にはさんだ話に、こんなのがあった。
ある雨の降る日に、棕隠が笠なしで、とびこんで来た。するとその家の亭主か誰かが「夕立にぬれて骨まで腐れ儒者」