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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
鈴木一族
それから後は、私どもが裏のお宮への道に通じる上坂に出るのには、表通りから大回りするのでなければ、その鈴木の邸内を通らせてもらうよりほかなくなったわけである。
鈴木の家は後に拡張して引越したが、今も辻川に住んでいるとか。この鈴木という苗字についてはいろいろ調べたことがある。
鈴木一族
全国を通じて、鈴木の姓は非常に多い。もとはみな熊野の出だが、どういうものか、鈴木姓のものの行く所はみな栄えている。紋所はみな稲の丸である。
熊野の出とはいっても、和歌山の方に近い藤代という、熊野王子の一つであった所からおこったといわれ、かの『義経記』以来鈴木一族が世に現われてきたのである。熊野詣りの道を、泉州堺を起点として九十九王子にわけて祀っているが、その何番目かに藤代がある。今の海南市から少し先へ行くと、藤代という坂があり、それを越えると藤代になる。
義経に従って平泉へ行き、衣川で討死した鈴木三郎も、その弟の亀井六郎も、みなこの藤代の出身ということになっている。熊野路では、鈴木、榎本、宇井の三軒の名家があり、この三軒の者でなければ人間でないとまでいわれたほどである。