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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
日向を旅して椎葉に行った時、そこの民家の構造が、非常に私の生家などと違っていたので、どういう訳だろうと思って、新渡戸博士と議論をしたことがある。四間通りの家が原則だというのが新渡戸説だったが、私はそのころは、二間造りの部屋にうしろのないのが本当で、あとになってだんだん奥の方へ建て増していったものではないかと思い込んでいた。
ところがそれは思い違いであった。日向の椎葉とか、あるいは大和の十津川とかいうような山の崖の下にある家では、そう奥行がとれないから、一間通りにする他なく、やっと前へ出すとか、縁側をつける程度ですましているのであることが判った。つまり山村の建築には、田の字型というのでない間取りが少なくない。どっちが旧いかというと、やはり四間通りの田の字型ではないかと、今では思っている。
近年になって、農家の建築が非常に発達し、田の字型がごく普通になったが、その前はやはり縦にいくつかの部屋が並んでいて、その間はただ便宜上衝立などでしきってあったのではないか。そして用のない時は、しきりをぐっと奥によせて、手前の方を広くしてあって、ただお産があったり、病人が寝たりすると、しきりをこちらまで持ち出すというふうに、動きのとれる家が普通だったのではないかと、いつでも旧い家を見るたびにそう考える。