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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

もちろんそれとても、僕の懐疑の全体を尽したものでなく、かつ後になってみれば、考えの至らなかった誤謬や欠陥のあるものにちがいないが、とにかく或る程度まで、僕自身を満足させる解答に達したので、三年ほど前から、稿を集めようと、腹案に取りかかった。ところがいよいよ執筆に取りかかると、例によってまた別の新しい懐疑に取りつかれ、殆んど出版の自信を失ってしまった。結局僕の思索生活は、次から次へと新しい懐疑の続出であり、永久にいつまでたっても、最後の結論に到達することのできないもの、空しき無限軌道の努力にすぎないように思われる。

しかしこうした懐疑的思索の中でも、自由詩に関する詩形上の問題だけは、比較的事が簡単であるだけに、可成動きのない確信にまで到達していた。それで僕は、ずっと前から計画していた『詩の原理』の著述を断念し、せめてその一部としての、自由詩に関する論文だけを、体系的に著述しようと考えた。そこで鎌倉に居た間、約一カ年の時日を、もっぱらこの思索と著述とに没頭した。(鎌倉に於ける一カ年は、文字通りの哲人生活であって、朝から晩まで、僕は抽象上の思案にばかり耽っていた。