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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

旧山河

武蔵野は武蔵野のままである。また、坂東の平野も、丘も、大河も、小川も、十三年前にわかれた旧山河は、そっくり、彼の記憶のままだった。

「……何ひとつ、変っていない」

小次郎は、近づく郷里の空へ、つぶやいた。

流転の烈しい都から、この無変化な、原始の原貌をもったままの天地へ帰って来て、彼は、回顧のなつかしさよりも、不安に似た寂寥にとらわれた。

しかし、さすがに、豊田郷に近づいた日は、生れた郷の土のにおいが、そくそくと、多感を呼んだ。

「おお。兄だ。――兄が見えた」

「小次郎様にちがいない。小次郎様よ」

ゆくての道に、一かたまりの人群れが見え、彼を指さして、がやがやいっていたと思うと、中から三、四人の若者が、駈け出して来た。

「兄上。お迎えに出ていました。弟の三郎将頼です」

「四郎将平です」

――それから、将文、将武などの、末弟まで、みな来ていた。

「あーあ。大きくなったなあ、みんな」

小次郎は、その弟たちの、どの顔を見ても、十三年の空間を、つよく覚えた。田舎武者にはちがいなくても、それぞれ頼もしげな逞しさだ。彼は、一ぺんに、愛情の渦に取りまかれ、

「どうだ。おれも変ったろう。