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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

それを、無事成人してきたのは、誰の恩か――)と、手いたく、極めつけられては、黙って、涙をのんでしまうしか、なかったのです」

「ううム。……おまえたちには、恩を着せ、そして、おまえ達の為に、父が遺してくれた財物は、みな叔父共が、こそこそ運び去ったのだろう」

「ええ。この館は、空家同然です。もう何も残っていませぬ。兄上、私たちが、失ったのではありませんから、ゆるして下さい」

「ばか。たれが、おまえ達を、疑うものか。気の弱いやつ。泣くなもう……」

「は、はい」

「いいじゃないか、三郎。家財、調度、穀倉の穀、武器倉の武器が、みんな失くなろうと、ここに、おれが帰って来た。なお、父の代に、父が開拓した広大な田野や、血をもって、父が戦い守って来た相伝の土地は、小さい末弟たちに頒け与えても、余りある程な面積だ。気を取り直して、働けばいい。父の一代を、もいちど、おれたち自身が、父になって、やり直すことだ。……なあに、土さえあれば、何が、なくたって」

「ところが、その古くからの荘園も、新田も、兄上が十三年もお留守のまに、みな三家の叔父が、各、分けてしまいました」

「たれに? ……。