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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
「嵯峨源氏の、源護どのです。――兄上のお留守のうちでしたが、良兼叔父は、まえの妻を亡くされてから、その護どのの、御息女のひとりを、お娶いになりました。祝言の宴は、七日つづきで、私たち兄弟も、手伝いに、参りました」
「叔父の嫁娶りなら、おまえ達には、叔母迎えじゃないか。それが、宴にも招かれず、台盤所の手つだいか」
不機嫌な、兄の語気に、弟たちは、黙ってしまった。
――肚を立つべきではない。この孤児たちは、こう意気地なく、しつけられて来たのだ。小次郎は、すぐ思い直した。
「祝言ではないが、わが家でも、人招びを、やらねばならぬ。いつにしような。――おれの帰国披露目だ」
陽気に、いった。弟たちは、眼を見あわせた。老人みたいに、すぐ、費用の思案などするらしい。
「状を廻せ。いいか、叔父共へも。そのほか、父の旧知、もとの郎党、社寺の僧や神禰宜、郡吏の誰彼へも」
文案を書いて、彼は、弟たちへ渡した。
十荷の酒瓶を用意し、干魚、乾貝、川魚、鳥肉、果実、牛酪、菜根など、あらゆる珍味を調理して、当日の盛餐にそなえた。――おそらく、この館の古い厨房が始まって以来の煮炊きであったろう。