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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
麦秋
この夜の、帰国披露目を、さかいに、小次郎は、以後、将門と、名のることにした。
元服のときから、将門という名のりは持っていたが、都へ出たので、何となく童名のまま、つい過ぎたのである。弟たちすら、童名はつかっていない。彼は、その頃の、大家族制度のもとに、家長となり、また、将門となった。
麦秋
将門の帰国が知れわたると、何となく、以前、身を寄せていた郎党や家人が、ぼつぼつ、豊田の館へ、もどって来た。
かれらは皆、大掾国香や、良兼、良正などの叔父組が、肚をあわせて、ここの田産や財物を、将門が在京中に、分け奪りしてしまった非道な事実を、知っている。
「あんな非人情な者を、主人とするのはいやだが、御子がお帰りになったと聞いたので、戻って来たのだ」
いい合わせたように、仲間同士で、語りあっている。
将門は、うれしかった。同時に、よしっ、と何か、力づよい、自信をもった。
むかし程にはゆかないが、市で、奴婢奴僕も購い、馬も買い、附近の耕作や、未開墾地へも、手をつけ出した。
が、人が殖えれば、すぐ食糧がいる。その稲すらも、稲倉にない。
「麦秋だ。毛野川の河原畑は、もう真ッ黄色だ。