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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

……そして、船が、河心にまで出ても、なお、常陸岸の叔父たちの群れは、豆つぶみたいに見えていた。手を振って、坂東の豪族、曠野の王者たる父の良持と、後嗣の御子たる幼い自分を、祝福していた――。

父が、死ぬとき、あの叔父たちの良心を、信頼したのもムリはない。父も神ではない。今日の叔父共が、あのときの人間と同じ者だったということは、神でもなければ、分ろうはずはない。当然、父は、あとの小さい子供らと、一代に開拓した遺産の田領とを、そっくり、叔父共の良心に托して逝ってしまった。

……もし、霊があったら、父は、ここにこうして毛野川の水を見ている今の小次郎将門を、どう眺めていらっしゃるだろう?

勃然と、将門は、また憤りを、新たにしていた。……畜生と、思うそばから、涙が膝にこぼれて来た。

「もし父が生きていたら、奴等を、ただおくものではない。その父が世にいないのをつけめに勝手なまねをしている叔父共なのだ。ようし。父良持は、まだ生きているという事実を、悪叔父めらに、思いしらしてやろう。どこに生きているというか。……問うも愚かよ。おれは平良持の子だ。おれの中に、父がいるのはあたりまえだ」