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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

ただ、自分の性格の弱点が、もっとも、危険な羽目にぶつかるのだという反省は、充分にしていた。前もっての反省などが、役にたつ程ならば、なにも、弱点とはいえないし、将門が、怖れているのは、むしろ相手ではなく、自分であった。

「……おう。そうして、おいで遊ばすと、まこと、よう似ておいでなされますぞや。お亡くなり遊ばした良持様と。……血はあらそわれぬ。瓜二つじゃわ」

武具作りの野霜の翁は、客を上座にすえて、さっきから、見とれてばかりいる。見とれてはまた、一言一言、平伏してばかりいる。円座に坐って、将門は、あいさつのしようもなかった。余りに、ここの主も、家族も、自分を拝して、丁重にするからだった。都で、牛輦の輪を洗ったり、滝口へ勤めてからも、禁門で出会う衣冠の人には、いちいち頭ばかり下げていた癖がまだ抜けていない。まるで、これでは、自分があの忠平大臣になったような気もちがする。

実のところ、腹がへっていてたまらないのだ。礼儀よりは、飯を食いたい。そして、先の夜道も急がれる。

「なあ、梨丸」

将門は、きゅうくつそうに、横へ話しかけた。

「何でもいい。ざっと、粟でも稗でも、馳走になって、暇しようじゃないか。