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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

「小一条の左大臣家にもおりましたし、後に、御所の滝口にも、勤めたりなどして」

「では、あなたは、豊田の御子の、将門様ではありませんか」

「そうです。小次郎将門です」ようやく、彼は彼女を正視することができて――「私を、御存知ですか」と、心の距離を急にのぞいた。

「いいえ。お会いするのは、初めてですが、おうわさは、聞いていました。それに私も、元は、都の者ですから」

「そうですか。どうも、そうではないかと思いました」

「どうしてです?」

「どこやら、都の風がおありになるし、こんな、土も粗い風も荒い東国の果てに、あなたのような美しい人が……と」

「あれ、あんなことを、仰っしゃって」

彼女は、耳のあたりを、ぱっと染めて、自分の顔を、自分の肩のうしろへ隠した。からだの姿態につれて、長やかな黒髪もやさしい曲線を描いた。将門は、彼女の袿衣の襟あしから、久しくわすれていた都人の白粉の香を嗅ぎとって、何もかも、忘れていた。

すると、さっき奥へ取次にはいった良兼の家人たちに違いなかった三、四人の声がして、しきりに将門を探し廻っていた。そしてふと、中の一人が、ここの廂の下を、木の間ごしに窺って、