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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

不死人と、会わないのも、それ以来の――久しいことだった。

ひとつには、将門が、左大臣家から滝口の衛士へ、役替えされたためでもある。

その間に、左大臣家にあだした八坂の仲間が検挙され、首魁の不死人は刑部省の牢で獄死したと、噂された。

その後、純友が二度目に上洛したとき、将門は、彼と叡山の一角へ登った。酒を酌みながら、共に、青年客気の夢に酔い、平安の都を、眼下に見て、

(みて居給え。いまに、南海の一隅から、大事を挙げる天兵があるぞ。貴族政治の腐敗の府を揺り潰し、天下の窮民に、慈雨と希望を与える者が現われたら、それは伊予の純友だと思ってくれ。――君も坂東の曠野に生れ、しかも、帝系の家の御子ではないか。純友、西に立つと聞いたら、君も、東に立て)

こう、情熱の賦を歌われて、将門も、

(うん。君のいう通りだ。君のいう事を聞いていると、じつに、愉快になるよ)

と、いった。

純友は、片手に杯をあげながら、

(じゃあ、今日の誓いを記念しよう。君も、杯を持て)

といい、二人して、乾杯した。そして、呵々、大笑した。――都の春の一日には、滝口の小次郎に、そんな記憶も遠くあるにはあった。