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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

太古、この辺の密林に、巨獣が吼えていた頃の人間の遺習を、忘れぬままに、なおしているだけのことだった。そしてそれが無上の楽しみで、都の空も、土にたらす汗も、汗行も思わない土民たちであった。

「じゃあ、将門。自重してくれ。――陸奥の帰りには、また、きっと寄る。冬を越えて、来年になるだろうが、必ず、立寄るから」

この晩。

不死人は急に、別れを告げた。

東北の奥地――まだ蝦夷人種の勢力が多分に強い――平泉あたりまで、行くのだという。

目的は金。事を挙げるには金だ。砂金を手に入れて来るというのだ。将門には、地理的な知識もない。眼を瞠って聞くばかりである

(――盗みにでも行くのか)

よほど、訊いてみたかった。――が、そこまではいえないでいると、顔いろだけで、不死人は、将門の心を読み取ったように、笑い出した。

「都の怪盗も、都を追われてからは、木から落ちた猿だ。田舎は、おれに働きにくい。変現出没のきかない所だ。将門、ヘンな顔をするなよ。盗みに行くわけではなく、立派に物代を携えて、砂金と、交易して来るつもりだ」

「それならよかろうが、しかし、物代は」

「物代は、よその館に置いてある。