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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

魔計

あらかじめ、親心でいうておくのだ。もし叔父共が責めたら、よいようにいい解けよ」

魔計

貞盛の帰洛の別宴とはなっているが、兼ねては彼が右馬允に昇官した披露目の意味もあろう。夜に入るまでの盛宴だった。

主賓の源護は、老齢なので、ちょっと顔は見せたが、輿に乗って、明るいうちに帰った。一族のほとんども、それぞれ頃をはかって散った。――残ったのは、良兼、良正、それにすこし遅れて来た護の子息の扶、隆、繁の五人だった。

広間の燭を、一隅に縮めて、国香を中心、内輪だけがなお夜を飲み更かしているのは、話題が、将門の事になったからである。

「きょうは、この兄の嘆きも聞いてやって下さい」と、弟の隆は、自分の横恋慕は棚に上げて――

「長年、恋していた女を、兄は、将門に奪われて、悲嘆やる方なし……というこの頃なのです。うんと飲ませて、元気をつけていただかないと、恋死ぬかも知れません」

などと酔いにまかせていった。

貞盛は、かえって、揶揄い半分に、

「そうか、扶どの。――道理で浮かぬ顔よ。したが、失恋は、酒では癒えぬし……医師も匙を投げように」

と、おかしがった。

けれど良正、良兼たちは、わざと深刻な表情を持して笑わなかった。