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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

幸福な百日

月が更わるとすぐの日である。

石田の大叔父、大掾国香から、いんぎんな使者が来た。そして、将門宛に、書面があった。

披いて見ると、将門の父良持の法要を営みたいという招き状。

「あ。……もう亡父の十七年忌か」

彼はふと、茫として、遠い回顧にとらわれた。

――日は、五月四日。場所は、新治郡の大宝寺。

一族相寄って、良持どのの法要を営み申したい。ほかならぬ故人のこと、其許にも、旧事近情は水に流して、ぜひ御臨席ありたい。

という意味の文章である。

「……参ります。何は措いても」

つい眼に涙が溜った。返事をしたため、また、使者へ口でもことづけた。

幸福な百日

桔梗は、四日の事を聞いて、睫毛の翳に、憂わしそうな眸を沈めた。新妻らしく、まだ、良人にも、どこか気がねをたたえている。

「いらっしゃらなければ、いけないのでしょうか……」

俯し目になって、それだけをいい、どこか泛かない姿態であった。

明日となった。

桔梗は、また、

「どうしても、おいでにならなければいけませんの……?」

おとといと、同じようにいった。

将門は、ちょっと、眉を硬めて――

「そんな事より、新しい狩衣は、縫わしておいたのか。