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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

「え、え」

「この二、三年は、おれはただ、家運の挽回に、無我夢中だった。起きれば、田野へ出て、奴僕と共に、土にまみれ、疲れた身を、横たえると……桔梗、おまえの夢ばかりみていたよ。……夢が、昼の働きを励まし、昼のつかれも、夜の夢を楽しみに、ここ三年は暮していた」

「……私も。……私もです」

「二人の夢が、こう結ばれた。その二月の夜からの幸福さ。……おれは今、毎日、いっぱいなんだよ、その幸福で」

「ですから、この愛しい日を、いつまでも続けてゆけるように、じっと守っていたいのです」

「もとよりだ。……ただ、そんな幸福に、ここ百日も、恵まれていたものだから、まったく、亡父の十七年の年忌など、頭のうちに、思い出されもしなかったのだ。不孝といわれても仕方がないが、しかし、死んだ父上は、知っていてくれるよ。……ゆるして下さっているに違いない」

「…………」

「おれは、母とは、顔も知らないうちに別れ、父も少年の日に死なれてしもうた。こういう館住居では、その父へも、甘える日はなくて別れた。死んでから甘えてもいいだろうと思っているのだ。な、桔梗」

「ですから、明日の御法要へも」

「行くなというのか。