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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

「出つけない場所へ出たためか、あんなに、考えていたのに、いいわすれた。おととしからの、喧嘩沙汰だけではだめだ。そもそも、父良持の死後、おれたち、幼いみなし子が、叔父共の手に、ゆだねられ、そして、おれが十六で、都へ追いやられたその時の大掾国香のたくみだの、国香が、貞盛にいいつけて、おれを、都にいるうち刺し殺してしまえといいつけていた内輪事まで、つつまず打ち明けねば、わかるまい」

思いつつ、彼は、刑部卿だの、検非違使だの、別当だの、大中小判事などの公卿が衣冠をつらねている前では、思いの半分も、陳述できなかった。

あるとき、靫負庁の法廷で、右馬允貞盛と彼とが、対決された。貞盛は、ゆたかな辞嚢と、明晰な頭と、そして弁舌とをもって、滔々、数千言に亘って、将門のその日までの陳述を、ことごとく、いい覆して、

「従兄弟の間ですから、情においては、断ずるに忍びませんが、要するに、将門は、叔父たちの厚意を、みな悪意に解し、また飢民や浮浪の煽動にのり、彼自身も、後にはびっくりするような叔父殺しの大罪を犯し、ついに、大それた反官的な悪思想をも抱くにいたったものです。憐れむべき孤児のひがみに発し、性来の兇暴性が、地方の悪民に、利用されたものなのです。