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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

まアいい」と、ひとりして、頷いた。

「何が、まあいいのだ」

「余り、滑稽だからだ。いつまでたっても、君は、大人にならない。天然の童子だ」

「おかしな事をいうじゃないか」

「じゃあ、実を明かすが。――貞盛が訴えたと聞いたから、これはいかん、貴様の負けと決まっている。悪くすると、死罪かもしれない。おれは、そう直感した。――おぬしの豊田を訪ねたが、急いで、あとを追うように、上洛して来たのもそのためだ」

「そして」

「貴様は知るまいが、おれは、陸奥から持って来た砂金の大半を、その為に、費ってしまった。刑部省、靫負庁の主なる役どころの公卿や、殿上の参議たちに、手を廻して、裏口から贈っておいた。――貴様の勝ちは、その効き目だよ。うそだと思うなら、いまに分る。まあ、飲むがいい。飲んでいれば、いまに分る」

いっているところへ、

「やあ、不死人。もう始めたのか」

ひょっこり、一名の公卿がはいって来た。どこかで、見たような公卿だがと、将門は、小首をかしげた。そして、やがて杯を交わし始めてから、愕然とした。

それは、靫負庁の法官のひとりだ。たしかに、自分の裁きに立った公卿の一名にちがいない。