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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

冬の海

そのため、ちょうど官符をうけた諸地の地殻が、幾回となく、地震のように鳴動した。天地いちめん、ふしぎな微蛍光をおびた晦冥につつまれ、雪かとまごう降灰が、幾日となく降りつづいた。

すぐ翌年は、天慶元年(改元)である。いわゆる天慶ノ乱の、それが前兆であったよと、後にはみな、思い合せた事であった。

冬の海

右馬允貞盛は、ちぬの浦(江戸川尻)の沖を行く便船の上に、坐っていた。

ほかの沢山な旅客とはべつに、艫の一部を囲い、従者の長田真樹と牛浜忠太の二人を相手に、弁当をひらいて、小酌を交わしている。

土民的な地方人は、この主従に、眼をそばだてたが、

「都の堂上人が、東下りして、歌の旅でもしているのか……?」

と、いったような観察しか持てなかった。

便船は、今朝、上総の浜を出て、武蔵の芝崎村(後の浅草附近)へ向っていた。――で、船がいま、ちぬの浦をよぎる頃になると、旅客はみんな騒然と一方の天を見て指さしあった。――はるか西方に豊島ヶ岡や飯倉の丘陵(後の芝公園附近の高台)が半島のような影を曳いて望まれ、その方角に、富士の噴煙が、あざらかに眺められた。

「おお、西の空、えらい黒煙だ。