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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

より劣る馬鹿者視して、罵りやまないことだった。

いや、公卿堂上だけの悪口ならまだしも、はては、天子の暗愚におよび、藤原氏の女を閨門にいれて、かれら一門の非望をとげさせた桓武、嵯峨、淳和、陽成など歴代天皇の御名までを口にして、

「いったい、こんな世の中にした一族めらは、極悪党といっても足りねえが、させた者もまたさせた者で、天子様だから仕方がねえという法はあるまい。むかしむかし、おれたちの祖々から語り継がれて来た天皇というものは、仁徳天皇様を持ち出すまでもなく、こんなはずの者じゃあなかったぞ」

と、怨嗟をこめていう語気は、あながち酒だけのものではない。

かれらは、祖々からの慣わしで、天子というも、父母というも、自分たちのものという同意義に考えていた。だから、子が親に悪たれをたたく場合もありうるように、そこらの天皇や法皇の御名にたいしてもくそみそに悪口をいって憚らないのであった。

だが、小次郎がもっている習慣では、これは、霹靂にしびれたような驚愕だった。かれらの言葉のうらに持つ天皇と庶民との親愛の変形が、そんな言語になって出るのであろう――などという考察のいとまはない。