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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

京へ帰る日

後に思い合せれば、この一歩こそ、彼にとって、致命的なものであり、これまでの私闘的な争いから、天下の乱賊と呼ばれる境を踏みこえたものであったが、その朝の彼の行装や人馬は、意気揚々たるものであった。――すべての場合、人間が他の陥※に落ち入る一歩前というものは、たいがい得意に満ちているものである。

京へ帰る日

常陸の国庁には、先頃から太政官の巡察使が来ていた。そして数日間、中央との行政の打合せやら、貢税の状況などを、府官から訊き取ったりしていた。

弾正忠藤原定遠と、その随員たちであった。

その弾正忠定遠は、昨夜、国司の藤原維茂の邸に招かれて、盛大な饗宴の主賓にすえられた。

歓をつくして、旅舎にひきあげたのは、かなり深更のことであった。もちろん、彼の随員たちも、それぞれ酒食の饗応をうけ、みな飽満して眠りについた。

公務は、終ったのである。

ゆうべの宴は、送別の意味でもあった。しかし、わずかな残務と旅支度のために、翌一日は休養していた。

すると、荷駄に山と積ませた土産物をもって、維茂とその従者が、早朝に彼の旅舎を訪ねて来た。

「昨夜は、お疲れでしたろう。ろくなおもてなしもなくて」