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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

どうしても、ここで事件を紛糾させ、ここに戦端を切らして、坂東一面を燎原の火に染め、遠く、南の海に拠って、大挙の機を待ちかまえている藤原純友たち一味に、答えてやらなければならない時が来ていた。

で、不死人は、舌なめずりして、為憲の憤怒を、弄んだ。

「やあ、為憲どの。父上とはちがい、あんたなら耄碌もしておるまい。――兵馬を従えて来たのが悪いというが、それ程、常陸は物騒な国だから、要心に如くなしと考えてのことだ。主人や自分の身を守るのがなぜ悪い」

「なに、常陸は物騒だと」

「白ばッくれては困る。お若いくせに」

「事々にいい懸りをつけるな。かつて常陸から下総へ理不尽な兵など一兵も入れた事はないぞ」

「だが、一挙にそれをやろうと、密々、謀んでおられるではないか」

「ば、ばかな事を。何を証拠に」

「証拠呼ばわりなどはおかしい。聞きたくば、ここへ右馬允貞盛を呼んで来い」

「えっ。……貞盛などが」

「さ、連れていらっしゃいっ。どうだ。貞盛がこの国庁に折々姿を現わし、しかも数日前からいることも、こっちでは既に偵知している」

「問うに落ちず語るに落つ。汝らこそ、その通り、常に密偵を使って、犬の如く、他領を探っているのであろう」