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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

「ねえ。放免さん」

「なんだい。小冠者」

「へんな事、訊くようだけれど、どうして、都の人は、女も……それから時々の男でも、あんなに、色が白いんだろう?」

「はははは。白粉を、知らないのだろう、おまえは」

「白粉って、何」

「化粧に、顔へ塗けるものさ。鉛華もあれば、糯の粉で製えたものもある」

「なアんだ。顔へくッつけてるのか」

「きまっているじゃないか。女が、白粉をつけ始めたのは、今から二百余年もむかしの、持統天皇の頃からだというのに、まだ、東国へは、行っていないのかなあ」

「見たこともないよ。初めは、ほんとに、色が白い人なのかと思った」

「じゃあ、紅も知るまい。推古朝の頃、僧の曇徴が製え出した物だと聞いているが、おかしな事には、白粉も、観成という僧が、時の天皇に献上したのが始めだということになっている。……女の化粧になくてならない物が、どっちも、坊さんの発明だというから、おもしろいじゃないか」

「うそだい。それは、遣唐使が、支那から船で、持って来たんだ」

「ほ。なかなか、おまえも、知ってるな。けれど、輸入して来たのはやっぱり坊主だったにちがいない。どうして、僧侶というものは、あれでなかなか如才のないものだ。