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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

森の巫女

つねに、将門の気色や、また満座の雰囲気に、ひそかな注意を怠らずにいる藤原不死人だった。

「おい、おい、玄明。こら、玄明。おぬし、きょうの大役をひとつ、忘れておりはしないか」

「なんだ、不死人。いきなり、おれの腕くびなどをとらえて。これ、離せ」

「おれは、酔うた。……だが、おぬしはまだ、酩酊してはおるまいが」

「呂律を、はっきり申せ。何が、何だと」

「わからぬか。いや、忘れ惚けたのか、この、老いぼれは」

「老いぼれとは」

「まあ、怒り給うな。おんめでたき吉日ではないか。――なあ、興世王どの」と、不死人は、両手で両方の者に、絡みついた。

「これは、いかん」興世王は、酒豪である。性根は、たしかだ。「――玄明どの。不死人が、くだくだ申しておるのは、それ、三名して、昨夜ひそかに仕組んでおいたあの神降りの宴遊戯を、なぜ早く演らぬかと、催促しているのではないか。のう、そうだろう、不死人」

「そうだ、その事よ。何たるうつけ者ぞや、玄明は」

「や。なるほど」玄明も、そういわれて、急に、思い出した顔つきである。大仰に、頭を掻いた。

「まこと、酔いにまぎれて、うっかりしておったよ。……だが、せっかく、仕組んだ宴遊戯の筋書ではあるが、こう満座が酔いみだれてしもうては、ちと遅いな。