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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

まあ、やめておくか」

「ばかをいえ、ばかな事を。――祝宴はこれからだ。いままでは、大饗のほんの前酒盛と申すもの」

「だが、おぬしも、興世王どのも、その酩酊ぶりでは」

「なんの、おれは、酔わぬ。どこに、酔うているか。さあ、演れい。おれもおれの役割は、しゃんと、勤めるぞ」

「演れというても、かんじんな、巫女の森比女が見つからぬわ。はて、どこにおるやら」

「森比女は、かしこに、人と戯れておる。それ、立ち給え、そして筋書通り、演らせ給え」

不死人は、玄明の尻を、押し上げた。

玄明は、よろめき、よろめき、酒間を泳ぎ渡った。そして、武将たちをあいてに、杯を持って、何か、おしゃべりしていた森の巫女という女を横から拉して、橋廊下を大股に、社家の住居へと、渡って行った。

興世王と、不死人とは、それを見届けると、

「はははは。あはははは。連れて行ったわ、行きおったわ。どれ、それでは、こっちも、こうしてはおられぬぞ」

二人も起って、こっそり、橋廊下の彼方の建物の内へかくれた。

社家の住居は、大混雑であった。母屋も釜屋も、料理人やら饗膳の支度に立ち働く男女で足のふみ場もない有様だ。